回路・基板設計の現場では、近年のデジタル信号の高速化に伴い、
信号品質の劣化による動作不良の発生がより懸念されています。
このような問題を解決する1つの手法が、
伝送線路信号の信号品質を解析する
伝送線路シミュレーション(SI解析)です。
自社の設備やノウハウ、リソースを鑑みて、
こういったシミュレーションのみを
外部へ委託するケースも大いにあるかと存じます。
ただし、このシミュレーションを外部に委託するにあたっては、
押さえておくべきポイントをしっかりと委託先へ伝達することが重要です。
仮に、このポイントを正しく伝達できていないと
「基板設計前の参考材料とならなかった…」
「設計後の品質がシミュレーションの結果とは大きく異なる…」
などといった事態につながる恐れがあります。
そこで、今回はこのような事態を回避するための
伝送線路シミュレーション(SI解析)を委託する際に伝達すべきこと
をご紹介したいと思います。
是非最後までご確認ください。
(※SI解析の概要や活用を検討するポイントについては、
下記記事にて説明していますので、ご興味のある方は、ご確認ください。)
伝えるべきポイント①:対象となる信号線
基礎中の基礎ですが、伝送線路シミュレーションを実施するにあたっては、
どの信号線が対象となるか、明確に指定する必要があります。
データ線、アドレス線、クロック線、制御線など、どの信号線をシミュレーションするのかを
きちんと指定しないと、委託先側が何処のシミュレーションを実施するか分からず、
確認や相談の工数が発生し、シミュレーション期間が長期化するリスクがあります。
伝えるべきポイント②:ICの解析モデル
伝送線路シミュレーションには、回路図や部品表はもちろんですが、
使用するICのSPICEモデルやIBISモデルも必要です。
委託先でIBISモデルを使用する場合、以下の情報を確実に伝えてください。
・対象ICのIBISモデル
・対象信号の入力モデル
・対象信号の出力モデル
伝えるべきポイント③:対象となる信号の周波数帯域
対象となる信号の周波数帯域を伝達することも重要です。
仮に、正確な周波数帯域を伝達できていなければ、
シミュレーション条件の設定に不備が発生し、
結果が変動する恐れがあります。
具体的に委託する際には、以下の点を伝えるようにしましょう。
・信号線の周波数
・クロック周波数
伝えるべきポイント④:層構成と各層の役割
基板の層構成と各層の役割は、
シミュレーション結果に大きな影響を与えます。
例えば、委託先へ伝えた層構成と実際の層構成が少し異なるだけでも
「プレシミュレーション時には、信号波形に問題はなかったが、
ポストシミュレーションを行うと、オーバーシュートが発生している…」
なんてことにもつながりかねません。
そのため、シミュレーションの依頼時には、
層構成と各層の役割(GND層、電源層など)をしっかりと伝達することが重要です。
加えて、層間の距離や、
特定の層が伝送線路に与える影響、設計意図も併せて伝えると、
より的確なシミュレーションへつながります。
伝えるべきポイント⑤:基材の比誘電率と厚み
層構成と同様に、比誘電率や各層の厚みによっても、
シミュレーションの結果は大きく影響します。
したがって、基材の比誘電率の詳細に加えて、
厚みもミクロン単位で伝えるようにしましょう。
特に、FR-4などの一般的な材料だけでなく、
低誘電率や低損失の基材を使用している場合は
その詳細を伝えることを推奨します。
これらの情報を伝えることにより、
信号の立ち上がり・立ち下がり時間、ドライバ強度、入力特性
などを反映した上で、シミュレーションを実施でき、
シミュレーションの精度向上に大きく貢献します。
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今回は、伝送線路シミュレーション(SI解析)を
委託する際に伝達すべきことをご紹介しました。
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