薄型化・軽量化が可能で、設計自由度の高いフレキシブル基板は、
様々な電子機器に使用されています。
そして昨今、急速に普及しているのが「透明フレキシブル基板」です。
しかし、透明フレキシブル基板については、設計に活用できる情報は多くありません。
そこで今回は、
透明フレキシブル基板を設計するうえで、押さえておきたいポイントをご説明します。
早速ですが、
透明フレキシブル基板を設計する上で押さえてくべきポイントは
“極力線幅を狭くし、可能な限りパターン間ギャップを広くする”
ことです。
詳しく説明する前に、
まずは、透明フレキシブル基板の特徴についてご説明致します。
1.透明フレキシブル基板とは
透明フレキシブル基板とは、
耐熱性の高い透明サブストレートフィルムを使用したフレキシブル基板のことです。
電子機器は、デザイン性が求められるようになっており、
基板が人の目に触れる箇所で使用されることが多くなっています。
しかし、
小型化・軽量化のために従来のフレキシブル基板を用いると透明性が低く、
デザイン性の低下につながることもあり、
透明性が高く目立ちにくい透明フレキシブル基板が採用されています。
また、透明性が求められていた場合に使用されていたガラス基板の
代替品としても、透明フレキシブル基板は使用されています。
透明フレキシブル基板は、以下のような用途で使用されます。
・ 有機EL デジタルサイネージ
・ 静電容量式タッチパネル
・ LED照明
・ ウェアラブルデバイスのディスプレイ
・ 透明フィルムアンテナ
どれも、消費者の目に触れる製品であり、デザイン性が重要です。
透明ディスプレイなのに、フレキシブル基板が映り込んでしまうとデザイン性が低下してしまいます。また、ガラス基板を採用してしまうと、小型化・薄型化が難しく、柔軟性・設計の自由度も低く、課題が残ります。
高透明性をもつ透明フレキシブル基板は、このような課題を解決しています。
2.透明フレキシブル基板に用いられる材料
発熱時の耐熱性が求められるフレキシブル基板には、ポリイミドフィルムが採用されていますが、
透明性に課題がありました。
透明フレキシブル基板は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)を材料とし、
高透明性を実現しています。
昨今では、耐熱性と透明性に優れる透明ポリイミド(PI)の研究開発も進み、
材料として採用されています。
3.透明フレキシブル基板の層構成
透明フレキシブル基板は、一般的に片面(1層)、両面(2層)の層構成となります。
4.透明フレキシブル基板のメリット
透明フレキシブル基板は、従来のフレキシブル基板と同様に、以下の特長を持ちます。
1)屈曲できる
2)薄型化できる
3)軽量化できる
4)小型化できる
5)設計自由度がたかい
>>関連記事:”フレキシブルのメリットとデメリット”はこちら
また、透明フレキシブル基板は、「透明性」という点で褐色のフレキシブル基板とは異なり、
最大のメリットも透明性になります。
従来のフレキシブル基板に使用されるポリイミドフィルムは、
光の透過率が約60%程度とされますが、
ポリエステルフィルムを使用した透明フレキシブル基板は透過率が90%程度となります。
透明性を高め、さらに耐熱温度が300℃程度の透明ポリイミドフィルムでは
約88%の透明性を実現しています。
5.透明フレキシブル基板のデメリット
高い透明性をもち、デザイン性の向上を実現できる透明フレキシブル基板ですが、
従来のフレキシブル基板と比較し、以下の点がデメリットとされます。
1)価格
透明フレキシブル基板は、従来のフレキシブル基板と比較し、製造コストが高くなります。
仕様にもよりますが、約3倍程度の価格差が生じる場合があります。
低コストを実現したい場合は、
デザイン性を損ねないようにフレキシブル基板にて機器設計を行ない、
フレキシブル基板の設置箇所を検討する必要があります。
2)納期
透明フレキシブル基板は、従来のフレキシブル基板と比較し、流通量が多くありません。
製造メーカーも少なく、生産量も多くないため、
調達リードタイムが長くかかる点がデメリットとなります。
3)耐熱性
透明フレキシブル基板は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、
ポリエチレンテレフタレート(PET)等を使用しており、耐熱性に課題を持っていました。
しかし現在は、透明ポリイミドの研究が進んでおり、
従来のフレキシブル基板同等の耐熱性を保有する透明フレキシブル基板が開発され、
耐熱性の課題は解消傾向に向かっています。
5.透明フレキシブル基板を設計する上で、押さえておくべきポイント
まず、透明フレキシブル基板を設計するうえで、
通常のフレキシブル基板を設計するためのポイントを押さえておく必要があります。
1)表面実装部品は問題なく使えるが、パッド部を工夫する
2)パターン設計・形状はフレキ基板仕様用とする
3)薄いフレキ基板が裂けないよう形状に配慮
4)基板メーカーに使用条件などを明確に伝える
5)設計開発の費用と期間を抑えるためにDRをしっかりと行う
>>関連記事:”フレキシブル基板設計の際に押さえておきたい5つのポイント”はこちら
そして、
上記以外に、透明フレキシブル基板を設計するうえで
押さえておくべきポイントが、前述したとおり、
極力線幅を狭くし、可能な限りパターン間ギャップを広くする
ことです。
パターン間ギャップが狭くなると透明性が低下する可能性があります。
そのため、線幅を狭くしパターン間ギャップを可能な限り広くすることで、
透明性を向上することが可能となり、デザイン性を確保することが可能となります。
パターン間ギャップは基板外径の制限内で広げることができますが、線幅を狭くする場合は以下に注意する必要があります。
・断線リスクを回避できる線幅にする
線幅を狭くする場合、断線の発生に注意する必要があります。
透明フレキシブル基板では、断線リスクを回避するために、
片面:50μ以上、両面:80μ以上の線幅を確保することを推奨しています。
・インピーダンスがある場合に、適切な線幅・クリアランスを確保する
インピーダンスを調整する場合、適切な線幅とクリアランスでインピーダンスを整合します。インピーダンスを考慮せず線幅をただ狭くしてしまうと、ノイズ発生の原因にもなりますので、注意が必要です。
ちなみに…
実装は、窒素リフローで行なうことが重要です。
大気リフローを使用すると、基板変色の恐れがあり、透明性を損なう可能性があります。
今回の記事では、透明フレキシブル基板について説明させて頂きました。
アート電子では、透明フレキシブル基板の設計・実装に対応しております。
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