当社には皆様より、ノイズのお悩みを、
数多くお寄せいただいています。
今回のコラムでは、
配線幅や層間距離を最適化したけど、
出来上がった基板の特性インピーダンスがずれてしまう原因を説明致します。
1.特性インピーダンスがずれる原因
特性インピーダンスは、
配線幅、配線間隔、銅箔の厚み、
基準層となるGND層との距離、その間にある絶縁層の比誘電率
が関わる計算式で求められます。
シミュレーションソフトを使用することで
特性インピーダンスに合う配線幅、配線間隔を決定するため、
設計は難しいものではありません。
しかし、前述の通り、
特性インピーダンスになるように設計を行なった場合でも
実際に製造したプリント基板の特性インピーダンスがずれているということがあります。
これらは
1)パターン設計時に考慮した層構成と異なる層構成で基板製造をしている
2)パターン設計時に考慮した基材と異なる基材で基板製造をしている
の2つが原因となっていることが多くあります。
2.プリント基板製造メーカーによって異なる特性
プリント基板製造メーカーは配線幅や層間距離に関する仕上がり値など
独自のノウハウをもっており、その値は各社一定ではありません。
また、取り扱っている基材メーカーや型番のラインナップが異なります。
そのため、層構成が同一であっても
使用する基材によって比誘電率をはじめとした特性が異なり、
特性インピーダンスが変化します。
上記を考慮せずに、または考慮したとしても
どこかの段階で使用する基材が変わってしまうと
特性インピーダンスの不整合がおこり、ノイズ発生の原因となってしまいます。
3.基板設計時の注意点
では具体的に、
特性インピーダンスのずれを発生させない為に、
どのような対策を取るべきでしょうか。
1)パターン設計時に考慮した層構成と異なる層構成で基板製造をしている
パターン設計時に特性インピーダンスを検討した層構成と、
実際のプリント基板製造時の層構成が異なる場合、
インピーダンス整合が必要なパターンと基準層となるGND層との距離が
変化してしまい、特性インピーダンスのずれが発生する場合があります。
これは、
プリント基板製造や部品調達・部品実装を外部に委託する場合に多く発生しています。
パターン設計はA社で行い、プリント基板製造、部品調達、部品実装をB社で行う場合、
それぞれが異なる層構成を想定していると、上記のトラブルが発生します。
このトラブルを回避する為には
パターン設計メーカーに対しても、部品実装メーカーに対しても
特性インピーダンスの設計のもととなる層構成・層間距離が分かるように
層構成表を明示し、情報共有することが重要です。
2)パターン設計時に考慮した基材と異なる基材で基板製造をしている
パターン設計において、
これまで製作した基板実績をもとにパターン設計を行なうことは一般的です。
一からパターン設計をする必要がなく、
設計リードタイムを短縮できるため効率的です。
しかし、ここに落とし穴があります。
同じパターン設計であっても
製造実績のある基材と異なる基材を使用すると誘電率が異なるため、
特性インピーダンスがずれる可能性があります。
コスト面や品質を見直し基材を変更した場合や、基材が生産終了となり、
やむを得なく基材を変更しないといけない場合は、
層構成や誘電率など、特性インピーダンスに与える影響を検討し、
配線幅、配線間隔を見直す必要がございます。
使用する基材を変更する場合には、必ず、
プリント基板製造メーカーに層構成、配線幅、配線間隔を確認し、
パターン設計をすることが重要です。
今回は、パターン設計段階と実際の基板で、
特性インピーダンスがずれる原因を紹介させて頂きました。
当コラム内で記載した
「配線幅」や「層間距離」は、
特性インピーダンスと密接に関係しています。
層間距離とインピーダンスの関係について、
以下の動画にて検証を行なっていますので、
是非こちらもご確認下さい。