パスコンはバイパスコンデンサの略であり、電源とGND間に接続されてノイズを吸収する役目を持つもののことを指すことは、回路設計や基板設計を行うエンジニアの方々には耳慣れた言葉と思います。
※パスコンとは一体何?ということについては当社が運営する
ノイズ対策.comのコンテンツを参照ください。
しかしこのパスコン、基本とはいえど重要な役目を果たすので、ちょっとした間違いでもICが動作しなかったり、ノイズが発生したりということも起きかねません。
そこで今回は、パスコンを設置する際の基本的なポイントや注意事項についてお伝えしたいと思います。
1.パスコンの配置・配線の基本的なポイント
まずICへの電源配線は、パスコンを経由して接続されるようにするのが基本であり、具体的にはビア(内層ベタ・電源)、パスコン、そしてICの順に繋ぐように設計します。しかし、回路図の書き方次第では正確にパスコンが読み取れない場合もあるため、そこで見落としてしまってパスコンが正しく反映されなければ、ノイズが発生する原因にもなってしまいます。
それではパスコンを使用するにあたっての基本的なポイントをご紹介して参りましょう。
①電源ピンに出来る限り近く配置する
ごくごく初歩的なことですが、パスコンは電源ピンに出来るだけ近くに配線します。部品配置上困難というケースも無くはないですが、ここを意識してパスコンの位置を決定することが、パスコンを機能させる上で何よりも重要になります。
②同じ電源ピンに容量の異なるパスコンを取り付ける場合は、
電源ピン側から小さい順に配置する
パスコンは一つだけではなく複数個設置することもあります。この場合は、たとえば、電源ピン ← 0.01uF ← 0.1uF ← 1uFといった具合に電源ピン側から容量の小さい順に並べるようにします。
なお、10μFや電解コンデンサなど大きな容量のものについては、少し離れた個所に設置しても良いとされています。
③電源ピンまでの経路は、大元の電源(内層の電源プレーン)から
コンデンサを通過して接続する
ここも重要なポイントになりますが、図示すると、電源ピン ← 0.01uF ← 0.1uF ← 1uF ← 大本の電源 という具合になります。なおこちらも前述の②と同様、少し大きな容量の10μFや電解コンデンサなどは、電源ピンから少し離れた個所でも良いとされています。
④GND側も電源ピンの配線と同様にする
以上お伝えした4つのポイントは基本ですので、皆様も様々な専門書やインターネットで目にしたことがあると思いますが、一方で、パスコンの間違った使い方に起因するトラブルは身近で発生しているのではないでしょうか。
2.パスコンでよく起こしがちな、配置ミスや使い方の勘違い
そこでアート電子では、パスコンでよく起こしがちな配置のミスや、勘違いしやすいパスコンの使い方を下記に纏めました。
基本的な正しい使い方とトラブルシューティングの双方からのアプローチで、ぜひパスコンによるトラブルゼロを実現していきましょう。
①電源ピンではない箇所に取り付けてしまう
タイトルだけを見るとそんなことってあるの?と思われるかも知れませんが、意外と多いのがこの勘違い。空きピン処理などで、電源やGNDへ接続しようとしている箇所を電源ピンと思ってパスコンを取り付けてしまうことが結構あります。
②回路図の書き方で勘違いしてしまう
ICの電源ピン・GNDピンに直接取り付けて記載があるものは分かりやすいのですが、電源・GNDピンだけ取り出して、回路図の別の場所に書いてある場合があります。こういったケースでは、どこで使用するパスコンか確認せずに別の場所に取り付けてしまう、というミスが発生しやすくなります。
また同様に、回路図で複数のIC用のコンデンサがまとめて書いてある場合に、回路図の様にまとめて配置、配線してしまうこともあります。
このように、回路図の書き方は様々なパターンがあるため、書き方によってパスコンが読み取りにくい、勘違いしやすくなります。パターンとして纏めると下記となります。
・ICに直接取りついているもの
・電源、GNDピンだけ取り出して、別で書いてあるもの
・大きなIC等で電源、GNDピンがたくさんあるものは、電源、GNDブロックだけ纏めて記載し、必要なパスコンも纏めて書いているもの
③電源ピン近くにコンデンサが配置されているが、通過した経路となっていない
(ベタ配線や、複数のコンデンサがある場合に起こしやすいケース)
④電源ピン近くにコンデンサが配置されているが、GNDピン側が遠い
この場合、電源ピンとGNDピンが離れているICもあるが、GNDピン側も近くなるように考慮してパスコンを配置することが必要になります。
⑤GND側が問題あるケース
電源側は問題なくパスコンを配線できているが、GND側が細い配線で長く引き延ばしてあるなど、いい加減な配線となるとパスコンの効果が薄くなります。
パスコンの配置は決して難しくないのにトラブルが絶えない背景は、上記のほか、パスコンの配置は、パターン設計CADでは、すべて同じ電源・GNDが多いため、どこに配置・配線されていてもエラーにならないこと、タイトな開発日程の中で回路図をしっかりと見ないで配線を進めてしまう、ということが考えられます。
さらに他の部品や配線の兼ね合いもあるので、なかなか思い通りの部品配置ができないことも起因していると思われます。
アート電子では、上記で述べたパスコンによる対策も含め、ノイズに強い基板づくりの設計ノウハウをYoutubeチャンネル「ノイズ対策チャンネル」上で公開しておりますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。