ノイズ低減のための一筆書き配線のポイント
プリント基板では複数の回路に配線を接続する場合、代表的な接続方法として
・一筆書き配線
と
・分岐配線
があります。
一筆書き配線(デイジーチェーン配線)はプリント基板配線でよく使用されている配線方法であり、複数の部品の間を分岐せず、直列に配線し一筆書きの様にすることです。
これに対して分岐配線(スター配線)とは、特定のデバイスから複数のデバイスへそれぞれ配線する方法です。
今回はプリント基板における一筆書き配線についての注意点をお伝えしたいと思います。
分かりやすいよう、具体的に下記のような回路図を想定します。これは1対多のBUS信号などを想定している、
ドライバからレシーバ2つへ分岐せずに一筆書きしている配線です(シミュレーション上は負荷を同じとしています)。
パターン設計時はこのような配線になっていることが多いかと思います。
一筆書き配線は配線もしやすくプリント基板配線でよく使用されている配線方法です。しかし、上記のようなCAD図上では簡単に描くことができますが、実際の配線時にはデバイスのピンの所をうまく通過するように配線するのは、なかなか難しいのではないかと思います。
それでは、信号品質や反射などの影響をどうやって抑えるのか? については、
下記のYoutube動画で詳しく解説をしていますのでぜひご覧になってください。
見ている時間がない方のために簡単に要約しますと、
・1つ目のレシーバと2つ目のレシーバの間の配線を長くすると、
オーバーシュート・リンギングが悪化。
・この配線を短くすると、レシーバ2つともオーバーシュート・リンギングが改善。
・さらにダンピング抵抗を調整することで綺麗な波形となる。
つまり、今回の事例で申しますと、一筆書き配線では「レシーバ間の距離が短かい方が波形が良い」ということになります。一筆書き配線が多くなると配線が長くなってしまうことも考えられるため、ぜひ注意して設計を行いましょう。ちなみにレシーバが多くぶら下がっていると波形が乱れやすくなることは押さえておきくべきかと思います。
さらに、レシーバが3つの場合や高速信号の場合はシミュレーションをして進め方を決めておくことをおすすめ致します。
なお、ピンの所を通過するように配線するのが理想ですが、実際はメインのラインから少し分岐してデバイスに配線するような形(スタブ)になることも多いはずです。このスタブが長くなってくると反射が発生し、信号の品質が悪くなってきます。また、配線の途中にあるデバイスが反射の影響を受けやすくなるということも押さえた設計を行うと開発がスムーズに進みます。
一筆書き配線は配線を短くできるため、遅い信号ではあまり影響はないかと思いますが、高速信号では短いスタブでも信号品質に問題が発生する可能性があります。メモリ配線では分岐配線になっていることが多いかと思いますので、このあたりもケアして頂けるとよい波形が得られます。
いかがだったでしょうか。
アート電子では、ノイズの少ないプリント基板を実現するため、今回ご紹介した一筆書きのような基板設計の基本はもちろん、これまでの経験を蓄積しノウハウとして活用できるように仕組みを構築しており日々の設計に活かしています。お困りの基板がございましたら、まずはTeamsなどのWEB会議でのご相談をお受けすることが可能ですので、ぜひお気軽にご連絡ください。
また、一筆書き配線と合わせて、下記Youtube動画もご覧頂けると、さらに理解が深まると思います。お時間のある時に眺めて頂ければと思います。
【概要】
2分岐での負荷における、分岐後の配線長と波形の関係を解説。
配線長が同じであれば波形の乱れは無く、配線長に差があるとリンギングが発生。
配線長に差がある場合、配線パターンは短い方が悪くなる。
【概要】
ドライブ能力、基板の仕様、配線方法等の組み合わせでどんな波形になるかが決まり、
ダンピング抵抗の要否、抵抗値が決定するので、シミュレーション上で抵抗値を変化させ、
波形を確認しながら最適なダンピング抵抗値を割り出すことが必要。