基板の小型化・高密度化が進む現代においても
片面基板は低コストであるという利点から
回路規模が小さく、密度に余裕があるケース等、
幅広い用途で重宝されています。
しかしながら、片面基板では、
一つの銅箔面で全ての配線設計を行う必要があるため、
両面基板・多層基板とは異なる独自のポイントを
押さえた上で設計を行う必要があります。
仮に両面基板や多層基板と同じ感覚で設計を行うと、
「スペースが足りずに、片面に配線設計を収めることができない…」
なんて事態にも陥りかねません。
そこで、今回はこの片面基板の
配線設計ポイントを5つご紹介したいと思います。
少しでも興味を持っていただけましたら、
是非最後までご確認ください!
ポイント①:部品取り付け穴のランド径を大きくする
両面基板におけるDIP部品の取り付け穴は、
穴壁にもめっきの付いたスルーホールであり
下図のように部品のリードを差し込み、
両面のランドや穴壁にはんだで取り付けることができます。
一方、一般的な片面基板における部品取り付け穴は、
下図の通り、穴壁にめっきがなくランドは片側のノンスルーホールとなっており、
はんだ付けする部分が少ないのです。
この状態では、強度的に弱くなるので、ランドの剥離やクラックが起きる可能性があります。
上述の問題を回避するため、下図の通り、
片面基板における部品取り付け穴では、
ランド径をスルーホール基板よりも大きくし、
また、レジストを少し被せる(オーバーレジスト)ことが重要です。
これにより、はんだ付けできる部分が増えることによる強度向上はもちろん、
ランドの剥離やクラック発生のリスクを削減できるのです。
ポイント②:配線スペースを確保するため、ランドを長丸形状にする
両面基板・多層基板と比較し、
片面基板は、配線スペースが非常に限られているため、
ピンとピンの間に配線することも重要となります。
また、ピン間を配線することで、配線を入れ替えることが出来ます。
ただし、配線したいピン間に片面基板用に大きくしたランドがあると、
スペースを圧迫し、ピン間をうまく配線することができない
といったケースがあります。
こんな場合、下図のように長手方向に
ランドを大きくし、長丸形状にすることで
ピン間を配線することができるようになります。
つまり、配線スペースに余裕がない場合には、
ランド形状を長丸形状へ柔軟に変更するなど
スペースを確保する対策が重要なのです。
ポイント③:SMD部品は、DIP部品と逆側の面に配置する
片面基板において、下図のようにSMD部品とDIP部品の双方を使用する場合、
誤って、DIP部品と同じ面にSMD部品を配置してしまうケースがあります。
当然のことながら、片面基板では片側にしか銅箔がないため、
これでは、DIP・SMDのどちらかの部品をはんだ付けすることができず、
製品として成り立ちません。
つまり、片面基板において、
SMD部品とDIP部品を併用する場合は、下図のように
必ずSMD部品をDIP部品とは逆側の面に配置する必要があります。
こんな基本は間違わないと思ってしまいがちですが、配置時には意外と多いので
手戻りを防ぐ意味でも確認してから設計を行いましょう。
ポイント④:配線を交差させる場合は、ジャンパーを活用する
片面基板では1面で配線を完結させる必要があるため、
配線を交差させることができません。
しかしながら、交差させないで配線を完了することは困難なことが多くあります。
そんな時には、ジャンパーの使用を選択肢に入れながら設計を進めましょう。
ジャンパーは、主にDIPタイプのジャンパー線や、
SMDタイプのジャンパー抵抗(0Ω抵抗)など、様々な形状・サイズがあります。
スペースや、配線本数などにより使い分ける必要がありますが、
特にSMDタイプのジャンパー抵抗を使用する際には、
部品下に配線が密集することになりますので、
ノイズの抑制に細心の注意を払いましょう。
ポイント⑤:配線を考慮し、部品配置を最適化する
両面基板や多層基板と比較すると、
片面基板は部品配置や配線設計が非常に難しいといえます。
特に片面基板では、ポイント④でも解説しました通り
1面で配線を完結させる必要があります。
そのためには、配線設計のみならず、
部品配置の工夫も重要です。
どれだけ配線設計を工夫したとしても、
部品が最適な配置でないと、配線の交差する数が増えてしまいます。
すると、ジャンパーの数が増えスペースを圧迫して
片面では配線が成り立たなくなるという悪循環につながるのです。
そのため、片面基板では両面基板や多層基板の設計時よりも
さらに、配線を考慮しながら、部品配置を行いましょう。
片面基板の配線設計もアート電子にお任せください!
当記事をお読みいただき、ありがとうございます。
片面基板の配線設計の際に、当記事の情報を
ご活用いただけますと非常に嬉しいです。
ちなみに、アート電子では
片面基板の配線設計も得意としており、
片面基板独自のポイントを押さえた上で、
最適なパターン設計を行うことが可能です。
また、片面基板のパターン設計のみならず、
回路設計〜部品実装まで一貫して対応することが可能ですので、
お困りの案件がございましたら、お気軽にご相談ください。
また、当社ではその他の多数の技術情報をWEBサイトにアップしていますので、
ご興味をお持ちの方はぜひご一読頂ければと思います。