厚銅基板における最適な銅箔厚の検討ポイント

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大電流・小型化が求められる車載関係等の基板では

放熱性を向上させるために

銅箔厚が70μm、105μm、300μmなどの

厚銅基板が用いられます。

 

一般的に、この厚銅基板の銅箔の厚みを決定する際には、

基板に流す電流値や各部の発熱量(損失)から逆算します。

 

しかしながら、単に電流値や基板特性のみを基に、

銅箔厚を決定してしまうと、

「基板の調達コストが高価になりすぎる…」

「基板の入手に時間がかかりすぎて、開発が間に合わない…」

「想定していた部品が使用できず、設計をやり直す必要がある…」

なんて事態に陥る可能性があります。

 

それでは一体、最適な銅箔厚はどう設定すれば良いのでしょうか。

 

今回は、この厚銅基板における最適な銅箔厚の検討ポイントを

①納期・価格②部品選定の2つの観点から詳しくご説明したいと思います。

 

 

銅箔の厚みにより、納期・価格が大きく異なる!

 

まずは、厚銅基板の納期・価格面についてご紹介します。

 

ごく一般的なプリント基板における、

外層の銅箔厚は18μmか35μmですが、

厚銅基板では銅箔厚が70μm105μm、さらには、

300μm以上が求められることもあります。

 

当然のことながら、この銅箔厚が厚くなればなるほど、

納期が長期化する上、価格も高くなります。

 

例えば、銅箔厚が300μmの基板の場合

入手に1ヶ月近くかかるケースも珍しくありません。

 

一方で、銅箔厚が70μmの基板は、市場ニーズも高いことから、

一般的な銅箔厚18μm、35μmと殆ど同様の期間で入手することが可能です。

 

下記にて当社が実際に調達した場合の納期・価格の具体例をご紹介します。

是非ご参考ください。(条件:試作、通常貫通基板、少量)

 

画像

※価格については、外形サイズ・数量で変動するためおおまかな目安として記載しております。

 

 

パターン幅・間隔を考慮した上で、銅箔厚を検討する!

 

次に、部品選定の観点から

銅箔厚の検討ポイントをご紹介します。

 

一般的に、銅箔厚が厚くなると、

基板のパターン幅とパターン間隔も比例して大きくなります。

 

具体的に、下記にて銅箔厚が異なる場合のパターン幅、パターン間隔の最小値の一例を示します。

(※あくまで一例ですので、参考数値としてご確認ください。)

 

【例】

銅箔厚 35μmの場合:パターン幅=0.2mm/パターン間隔=0.2mm

銅箔厚 70μmの場合:パターン幅=0.25mm/パターン間隔=0.25mm

銅箔厚 300μmの場合:パターン幅=0.6mm/パターン間隔=0.6mm

銅箔厚 400μmの場合:パターン幅=0.8mm/パターン間隔=0.8mm

 

>>厚銅基板の部品選定における意外な落とし穴

 

例えば、搭載するICのピンピッチが0.5mmであるケースを想定した場合、

銅箔厚70μmの厚銅基板では、最小のパターン幅とパターン間隔が上記の通り、

約0.25mm(参考値)となるため、このICを実装する為のパッドを形成することが可能です。

 

一方、銅箔厚300μmの厚銅基板では

最小のパターン幅とパターン間隔が約0.6mm(参考値)となるため、

このICを実装する為のパッドを形成することはできません。

 

この例のように、パターン幅・間隔を考慮しないと、

部品が使用できない事態に陥る可能性があるため、

銅箔厚を決定する際には、パターン幅、パターン間隔の

最小値と部品サイズを予め確認し、搭載部品が本当に問題なく

使用できるかを検討しておくことが非常に重要なのです。

 

 

銅箔厚70μmの厚銅基板が最も使い勝手が良い!?

 

以上、①納期・価格、②部品選定の

2つの観点から最適な銅箔厚の検討ポイントをご紹介しました。

 

双方の観点から鑑みると、まずは、

納期が短く、価格が安価な上、

パターン幅・間隔の制限が緩い

銅箔厚70μmの厚銅基板をファーストチョイスとして検討することを推奨します。

 

もちろん、流したい電流値によっては、

銅箔厚70μmでは仕様を満足しないケースもありますが、

基板層数やパターン幅を工夫することで対応することも可能です。

 

実際に当社でも、電流値と放熱を考慮した上で、

外層35μm、内層300μmの4層基板で検討していた製品を

納期・価格と部品配置を鑑みた結果、

外層・内層70μmの8層基板で設計した

なんてケースも珍しくありません。

 

また、実装工程でも、

銅箔厚300μmなどの基板では、

通常とは実装条件が大きく異なるため、

プロファイルの検討に時間を要します。

 

そのため、特に開発を急いでいる場合には、

銅箔厚70μmの厚銅基板をベースに

層数を増やすなどの検討してみる

と良いのではないでしょうか。

 

 

厚銅基板のパターン設計もアート電子にお任せください!

 

当記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 

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