当たり前ではありますが、
電子機器の安定動作を実現するためには、
ノイズ対策を徹底した基板設計が要求されます。
このような高度なノイズ対策を実現するにあたっては、
発生し得るノイズを定量的に確認できる
EMIチェックをはじめとしたシミュレーションの
活用は必要不可欠ともいえます。
しかしながら、とにかくシミュレーションを
活用すればいいのかというと、そうではありません。
例えば、適切でない場面でシミュレーションを活用してしまうと、
設計・シミュレーションコストの高騰や
設計期間の長期化につながる恐れがあるためです。
つまり、設計品質とコスト・納期のバランスを鑑みると、
最適な場面でシミュレーションを活用することが求められるのです。
そこで、今回はEMIチェックに焦点を当て、
どのようなケースでEMIチェックを活用すべきか
代表的なポイントをご紹介したいと思います!
EMIチェックとは?
まず、EMIチェックとは、どういった内容であるか改めて確認してみましょう。
EMIチェックとは、基板の配置・配線をEMI悪化要因の視点で
定量的にチェックを行うことを指します。
EMIの原因となる部品配置や配線、プレーン部分を抽出しその対策案を示します。
そのため、このEMIチェックを活用すれば、
基板を作成する前に然るべき対策を講じることが可能となります。
詳細については、下記記事にてご紹介していますので、是非ご確認ください。
検討ポイント①:リターンパスが不連続・迂回している
例えば、隣接層はGNDベタ層にしているが、
切り返し用の連続したビアがあったりベタパターンが
複数島となっていると、スリット(ベタの切れ目)ができます。
上画像の通り、この上を配線する際、
リターンパスの不連続や迂回が発生し
放射ノイズの要因となる恐れがあります。
このようなケースは、EMIチェックで確認が可能です。
ただし、全ての配線のリターンパスを確保することは難しいので、
重要な配線や高速信号などを重点的に確認することが重要です。
検討ポイント②:プレーン外周にビアがない
多層板で配線が多いケースや逆側の面に部品があるケースでは、
プレーンの外周にビアが打てないことがあります。
すると、他層との接続用のビアが少なくなり、
放射ノイズ発生の直接的な要因となります。
このようなケースでは、EMIチェックを行い
ビアの必要な個所を抽出し追加する為、部品・配線の移動を検討することが求められます。
検討ポイント③:デカップリングCが正しく接続されていない
基本的にデカップリングコンデンサは、
ICなどの電源ピンの近くに配置し
電源層(メインの電源)から、キャパシタを通して
正しくICの電源ピンへ接続することが求められます。
仮に、このデカップリングコンデンサが
正しく接続されていないと、放射ノイズの原因となる恐れがあります。
具体的に適切でない接続例としては、
・そもそも然るべき場所にコンデンサが設置されていない
・電源ピンからコンデンサまでの距離が遠い
・コンデンサを通って、電源ピンに接続されていない
・誤って電源ピンでない未使用のピンに接続している
などが挙げられます。
このようなケースでは、EMIチェックを実施し、
問題がないか確認することが重要です。
また、問題が不明確の場合であっても、
EMIチェックを通して、どんな問題があるか判別することが可能です。
検討ポイント④:配線長が長い
周囲の部品や配線状況によっては、配線が長くなりすぎると
アンテナとなり、ノイズが発生しやすくなります。
配線長が想定よりも長いと感じられる場合には
EMIチェックを活用することを推奨します。
その上で、定量的な問題があれば、
配線長の短縮が必要です。
検討ポイント⑤:基板端の近くに配線している
基板端の近くに配線があるとノイズ発生の懸念があります。
また、部品密度が高かったり、
スペースのある基板外周を利用して配線すると
さらに、ノイズ増大へつながる恐れが高まります。
そのため、上記のケースに当てはまる場合には、
EMIチェックを行い、事前に問題が発生していないか、
確認することをお勧めします。
基板シミュレーションならアート電子にお任せください!
今回は、EMIチェックをご紹介しましたが 、
チェッカーやシミュレーションはとにかく活用するということではなく、
然るべきケースで活用することが重要です。
アート電子では、EMIチェックのみならず、
SI解析、プレーン共振解析など
幅広いシミュレーションを行ってきた豊富な実績がございます。
この知見を基に、お客様のご要望に合わせて
最適なシミュレーションを提案・実施し、
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■ ノイズ対策に有効なシミュレーション~プレーン共振解析編~